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データが覆す「関東の旬」——3年12万件の船釣り釣果でわかったこと

「アジは夏の魚」。そう思っている人は多い。実際、夏は各港でアジ船が一番混み合う。ところが、関東・静岡の船宿から3年分・約12万件の釣果を集めて1便あたりの釣れ具合をならしてみると、アジが最もよく釣れているのは真冬だった。この記事では、そうした「データを見て初めて気づく旬」をいくつか紹介したい。

アジの本当のピークは1月

まず数字から。アジの1便あたりの釣果を旬(10日区切り)ごとに、年間平均を100として指数化するとこうなる。

夏より冬のほうが、1便あたり2〜3割よく釣れている。理由ははっきりしている。いわゆる寒アジだ。冬の東京湾のアジは脂がのって身が締まり、群れも濃くなる。船宿もこの時期は狙いを絞って出すから、1便あたりの数字が伸びる。

注意してほしいのは、これは「1便あたりの平均」だという点だ。出船回数そのものは夏のほうが多い(1旬あたり400〜550便に対し、冬は280〜360便)。つまり「夏はアジ船が多いが、1便あたりでは冬のほうがよく釣れる」。混雑を避けて数と型を両取りしたいなら、狙い目はむしろ冬——というのが、データの示す結論だ。

「夏の魚」「秋の魚」も、数字にすると解像度が上がる

同じ集計を全魚種に広げると、経験則とよく合うものもあれば、少しズレるものもある。ピーク旬(1便あたり指数が最も高い時期)を並べてみる。

魚種データ上のピーク指数
タイ五目8月中旬251
シイラ8月下旬243
イナダ8月下旬229
アオリイカ9月下旬201
ヤリイカ9月上旬187
マダコ6月下旬174
カワハギ11月上旬167
マダイ11月下旬164
ヒラメ10月上旬160
タチウオ1月上旬140

シイラやイナダの夏の指数が飛び抜けて高い(240前後)のは、青物が回遊で一気に固まる時期だからだ。逆にアジ・マダイのように通年狙える魚は、ピークでも指数160前後とゆるやかな山になる。「回遊魚は当たれば爆発、居着きの魚は年中そこそこ」という現場の感覚が、そのまま数字に出ている。

意外なのはタチウオだ。夏〜秋の東京湾のイメージが強いが、1便あたりで見ると1月上旬が最も高い。冬のタチウオは深場に落ちて型が大きくなり、当たれば数も型も伸びる。夏の数釣りと冬の型狙い、どちらを「旬」と呼ぶかで答えが変わる魚だと言える。

予測でいちばん効いたのは、意外にも「先週の実績」

船釣り予想では、水温・潮回り・黒潮の位置・台風の距離など、さまざまな海況データと釣果の関係を、魚種×船宿の単位で調べている。その中で、最も多くの組み合わせで釣果とはっきり結びついていた指標は、派手な海況ではなかった。「先週、同じ船宿で何匹釣れたか」だ。

3年分のデータで検証したところ、先週の釣果は251の魚種×船宿の組み合わせで釣果と正の相関を示し、相関の強さは平均で+0.39だった。要するに、先週釣れていた場所は、今週も釣れやすい。当たり前に聞こえるが、これは大事だ。SNSやネットで一週間前の釣果を追いかけることが、水温表とにらめっこするより実は効く——というのがデータの示すところである。

もちろん例外はある。青物のように群れが抜ければ翌週ゼロということも起きる。だからこそ「先週の実績」と「回遊のタイミング」を組み合わせて見る意味がある。

エリアは「分散」ではなく「集中」している

最後に、どこで釣れているか。魚種ごとに出船実績の多いエリアを見ると、多くの魚は特定の海域に強く偏っている。

「どこでも釣れる」魚は思ったより少ない。狙う魚が決まっているなら、実績の集中しているエリアの船宿を選ぶのが近道だ——という、当たり前だが数字で裏づけると心強い話である。

この記事のデータについて

集計の設計・数字の解釈・この記事の執筆は、運営者本人が確認して行っている。気づいた誤りや「うちのエリアは違う」といったご指摘は歓迎する。